あくまで私が勤務していた会社の、ある形式の車両だけで過去に頻繁に起きた話です。
その形式の車両は界磁チョッパ車でブレーキは電気指令式という、私鉄ではかなりオーソドックスな車両。
ご存じのように電気指令式のブレーキは段数が刻まれてあって、その段へ入れれば既定のブレーキ力が得られるというもの。
1段ならば空気制動のみの場合はBC圧力が80kPa前後とか、2段だと120kPa前後のような感じです。
※応過重装置によって旅客の人数・重さによってBC圧力は変わります。
ただし基本的には電気ブレーキ、近年の車両では回生ブレーキがごく当たり前に使用されているので、一瞬BCに圧力が掛かってもすぐに電気ブレーキ・回生ブレーキに切り替わります。
空制の時と同じ制動力が得られる電気ブレーキの強さが入ることになっています……。
なぜか特定の形式のみでしたが、段と段の合間(刻まれてはいない部分)にハンドルがピタッとはまり、その瞬間に回生ブレーキが切れて空気ブレーキのみになるという、困った現象がよく起きていました。
駅に停車させるべくブレーキを4段辺りに入れているとします。
ちょっと電車の勢いがまだあるがこのまま止まれるかな、保険を掛けて5段に入れようかななんて考えている時に、いつもよりちょっと躊躇しながら5段に入れようとゆっくりブレーキを入れよう……。
こういう時に4段と5段の間の刻まれていない部分でハンドルがはまり、その瞬間に回生ブレーキが切れて空気ブレーキだけになるんです。
私が担当していた路線の界磁チョッパ車の場合、25キロ前後で回生ブレーキから空気ブレーキになり、この時はそれほど衝動もありません。
ところが勝手に空気ブレーキだけになるこの現象は速度は関係ありません。
通常より速い速度、例えば80キロくらいで急に空気ブレーキのみになると、編成全体が変な揺れ方をするんですよ。
特に遅れ込め制御の車両の場合、回生ブレーキ作動時は空気ブレーキはまったく働いていません(後にさまざまな理由で1段分だけ利かせるようになりましたが)
T車は元々ノーブレーキの状態から一気にBC圧力が掛かるし、M車だって回生ブレーキが急に働かなくなってBCに圧力が掛かるのですが、ちょっとしたタイムラグがあるので車両が妙な挙動を示すんですよね。
もっと怖いのが、このブレーキの段数の合間にハンドルが入った瞬間に編成全体がノーブレーキ状態になるという、どう考えても欠陥だろうと思う症状がたまに出ていました。
たとえば駅に停車させるために、制動距離を考えてブレーキを5段に入れようと考えます。
一気に5段へもっていくと“ガツン!”とブレーキが利くことがあるので、(山手線でブレーキがきついと言われるのもこのため)私はややゆっくりめに1→2→3→4→5と入れていました。
私は自分で運転していてもあの“ガツン!”とブレーキが利く状態が嫌いだったし、電気指令式のブレーキを1段ずつゆっくり入れていくのと、電磁直通ブレーキを一気に70度とか80度に入れるのとでは制動距離は同じですしね。
で、このゆっくりとブレーキを1段ずつ入れている時に、段数の合間にハンドルがピタッと入り、その瞬間に完全なノーブレーキ状態になることが。
回生ブレーキも空気ブレーキもが完全に抜ける状態になるんです。
体はブレーキが掛かるものとして前に倒れないように自然と構えているわけですが、不意にノーブレーキなるので体が前に倒れそうになるというよりも、お尻が浮くって表現がピッタリなくらい、ホントに体がふわーっとする感じがするんですよ。
この形式の運転台に何か欠陥というか、思いもしない隘路があったのかもしれませんが、更新のさいにこれらの欠点も解消されていきました。
表には出せない車両の欠点というか欠陥ですが、結局は新しい形式が誕生するたびに予想できない何らかの事象があるんですよね。

