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ブレーキをかけているつもり…… ホームを行き過ぎてしまう事故

運転士
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鉄道の現場にいると、たまにちょっと頭を傾げてしまうようなミスを犯す運転士もいます。

今回お話しするのも、そんなちょっと信じられないようなミスをしてしまった運転士の話です。

 

 

その駅は場内信号機や出発信号機のない停留場で、場内信号機相当と出発信号機相当の閉塞信号機があるだけ。

私がいた会社では場内信号機や出発信号機があれば、停車列車に対しては場内信号機はY(黄)かYY(黄黄)が現示され、出発信号機はR(赤)が現示されていて、停車なのに通過と誤認しても信号現示に応じたATSによって速度は抑えられます。

Yならば45キロ以下で、速度が超過しておればATSによって自動的にブレーキがかかります。

ただし場内や出発信号機の無い駅の場合、信号機の内方に他の列車がいなければRが現示されることはなく、G(青)が現示されていることが普通です。

なので停車する停留場の場合は特定の地点で速度制限を設け、その速度を超えていればATSが動作するようになっていました。

ほとんどの駅は45キロの制限で、そのままブレーキをかけていると定位位置(停止目標)にたどり着かない可能性が高いので、一旦ブレーキを緩めて停車させるためにもう一度ブレーキをかけて停車させていました。(二段制動と呼んでいました)

今回お話する駅もホームの手前に45キロの制限があるのですが、制限の地点と停止目標までの距離が他の駅と比べて短く、また勾配の関係もあって二段制動で止める運転士は皆無。

二段制動にしても止められるのですが、ブレーキを緩めてすぐにややきつめのブレーキをかけることを避ける運転士が大半でしたから。

 

当該運転士はこの駅の45キロの制限を通過し、おそらく無意識でブレーキを緩めてしまった。

本人の感覚としてはブレーキを入れたままだったのでしょう、そのままブレーキをかけることなく1両目がホームから飛び出し、そこで気付いたのか非常ブレーキを入れて停止。

後で聞いた話では、車掌もほぼ同じタイミングで車掌弁を引いたとか。

 

これ不思議なんですよね。

だって運転士が止めなければいけない場所(停止目標)を見ていたら、止まるか止まらないかって分かるはずなんですよ。

分かるからブレーキを緩めたり、追加するわけですから。

でもブレーキを緩めたままで行き過ぎ、そこでようやくブレーキをかけていないことに気付いたようです。

それよりも驚いたのが、こんな人が数年後に助役になっていたという……、怖い会社だわ。

※以前は45キロの制限なんてなく、とにかく突っ込んで止めていたわけですが

 

こんな話を他社の友人としていると、

「うちでもよく似た事案があったよ……」

場内信号機がY現示で45キロに落とし、一旦ブレーキを緩めた。

そこからノーブレーキのまま出発信号機を超えてしまったというのです。

その会社のブレーキ弁は「全緩め位置」のあとに「緩め位置」が別にあって、「緩め位置」にハンドルを持って行くとブレーキはかかっていないが断流器の表示灯は点灯するらしいから、電制の回路が出来上がるのでしょうね。

「緩め位置」にブレーキを動かすことを「準備位置」と称していたらしく、その当時は基本制動として「準備位置」にハンドルを移動させて「断流器」の点灯確認後にブレーキ操作を行うとなっていたらしい。

「緩め位置」でいったんブレーキを止めてからブレーキ操作を行うと、電制の立ち上がりのショックを和らげられるとか、「断流器」の点灯を確認することで制動への意識を高められる……、らしいです。

 

45キロでブレーキを緩め、停止目標に止めるべくブレーキを「緩め位置」に移動させるまでは良かったけど、そのハンドルを移動させたことでブレーキをかけている気になった。

R現示の出発信号機を超えたところでATSが動作して警報音が鳴り響き、ブレーキをかけていないことに気付いたと言います。

この件があって以降「緩め位置」でハンドルを止めることが禁止されたようです。

 

出発信号機を超えた列車の停止位置修正は駅の助役の指示が必要だったけど、お昼時で肝心の助役はお昼ご飯を食べるために外出していて停止位置修正にも時間がかかり、それも問題になった一件だったらしいです。

 

 

ブレーキをかけていないのに、かけているつもりだった。

20年以上運転士をしましたが私はこんなけいけんがないですし、先にも書いたとおり、止めるべき場所を凝視していたらこのままで止まるのか、手前に止まりそうになるのか、行き過ぎてしまうのかなんて分かって当然だし、運転士ってそれが仕事だと思っていたのですが。

 



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