車掌になって2年目か3年目だったか、大昔のことなのではっきりとは覚えていませんが、とにかくタイトルの通りのことが起こりました。
平日の22時ごろの各駅停車を、勤務していた会社でもっとも乗降人員の多い駅から満員の状態で出発させました。
この時には特に異変に気付いてはいませんでした。
次の駅に停車してドアを開け、乗降が終わってドアを閉める。
運転士に対してベル二点の出発合図を送りました。
ベルを送った時に車体の側面がオレンジ色に光ったように見えましたが、その時は気に留めもせずに出発監視を行い、ふつうに次駅の放送を行いました。
次の駅でも乗降終了後にベル合図を送りましたが、やはりオレンジ色に光ったように見えました。
次の駅に停車してドアを開けてすぐに運転士に連絡を取り、ベルを押したときにオレンジ色に光るように見えると伝え、運転士にもその様子を見てもらいました。
「たしかに光ったように見えたけど、次の駅ではベルを長めに鳴らしてくれないか?」
私は〝ジーーーーーーーーーッ〟って長くうるさく鳴らすのが嫌いでいつも〝ジッ〟くらいに短くできるだけ静かに鳴らしていたので、確認がしづらかったようです。
その次の駅ではちょっと長めに〝ジーーッ、ジーーツ〟っていう感じに鳴らしたのですが、ベルを押す長さと同じく車体がオレンジ色に光りました。
「ベルを押すと非常通報灯がいっしょに光っているな、俺が無線で連絡しておくよ」
私がいた会社では非常通報灯と呼ばれていた、車内非常通報装置(車内の非常ボタン)が押された車両はどの車両なのかがすぐ分かるように車体側面に付けられている車側灯で、開扉状態を示す車側灯とは区別できるようにオレンジ色になっていました。
今の車両は車内非常通報装置が押されると乗務員室の乗務員と会話もできますし、何両目で押されたのかも乗務員室で表示されますが、昔のタイプは会話もできないし、乗務員室では何両目で押されたのかもわかりませんでした。
このために押された車内ではブザーが鳴動し、車両側面ではオレンジ色の車側灯が点灯するようになっていました。
この車側灯は乗務員が確認するためというよりは、駅に停車した後にホーム上から駅員がどの車両で押されたのかを確認するためという性格のほうが強いかもしれません。
乗務区から助役と車両課からは係員が数名やってきましたが首をひねるばかり。
車両課でも原因がまったくわからないとのことでしたから。
結局その車両は安全上問題はないだろうとのことで、車両振替もされず所定の運用で最後まで使われたようです。
「オレンジ色に光っている様子なんて、何年ぶりに見たのか忘れるくらい久しぶりだったよ。日が上がっている間は見えづらいけど、夜だとはっきり見えるんだな」
乗務区に帰ってきて運転士にかけられた言葉です。
私がいた会社だけかもしれませんが、乗務員が行う点検項目に車内非常通報装置の動作確認は入っておらず、このためにオレンジ色の車側灯が点灯しているところ見る機会もほとんどなかったのです。
私も乗務員を結果的には30年以上しましたが、この時を含めてオレンジ色の車側灯の点灯なんて2~3回しか見ていないです。