お知らせ

当サイトはドメインをformer-railroad-worker.comから

kaidoh-mitsuki.com

に変更しました。

電車の坂道発進、勾配起動スイッチも無くブレーキと力行の同時使用も不可…

運転士
記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

駅の設置場所がすべて平坦であれば、ブレーキを緩めても車両が転がることはありません。

駅停車中の転動防止(列車が勾配で転ばないようにブレーキをかけておく)も必要ないし、何よりも出発時の気の使い方が随分違ってきます。

上り勾配であろうと下り勾配であろうと転動防止は必須ですが、列車を起動させるときは下り勾配ならばそれほど気に留めることはありません。

ブレーキを緩めたところで進行方向に転がって行くだけですし、少しばかりノッチ(力行)を入れるタイミングが遅くとも特に支障もありません。

これが上り勾配となると話は違ってきます。

ブレーキを緩めた瞬間に進行方向とは逆方向に下って行きますから、例えば副本線からの出発時に後ろへ下れば、下手すれば後部の車両が接触限界を超えるなんてことにも繋がりかねません。

それ以上に運転士をしていて後方へ転がっていくのって、何とも言えない恐怖感を覚えます。

実際には1mほど下がっただけなのに、体感としては数m下がったように感じてしまい、後方の踏切を支障していないかな……、と様々な最悪な想定が頭をよぎります。

 

こういうったことが起きないようにするため、ワンハンドルの車両では勾配起動スイッチが設けられていることが多いですね。

ワンハンドルの車両は力行とブレーキを同じハンドルで行うことから、ブレーキと力行の同時操作は不可。

ブレーキを緩めて一気にノッチ(力行)に入れたとしても、途中でニュートラルの位置をハンドルは通過します。

ブレーキもかかっていなければ、力行もされていない、そんな箇所です。

勾配がきつければその瞬間に車両が転がる可能性が極めて高いので、勾配起動スイッチを設けて防いでいます。

このスイッチを押しておけば軽くブレーキが入った状態を保ったまま、ノッチ(力行)を入れることができます。

〇急だとバイパスブレーキと言うのだったかな?

ただ勾配起動スイッチがなくても上り勾配がきつい駅の場合、通常転動防止としてブレーキを2とか3入れるところを、4とか5くらいまで入れておき一気に緩めてノッチ(力行)を入れればほとんどの場合下がっていくことはありません。

 

ツーハンドルの場合、社局なのか車両によるのかは知りませんが、ブレーキを入れているときにノッチ(力行)を入れても稼働する車両があるそうですね。

たまたまXで201系がノッチ(力行)を先に入れて稼働音がしてからブレーキを緩めて発車していく、そんな動画を見たのですが、たしかにこれならば上り勾配でも下がる心配はないからいいなと思い見たのですが、私がいた会社の車両はそれができません。

ブレーキが少しでも入っているとノッチを入れても稼働しません。

なので後ろへ下がる可能性のある駅からの出発時には、通常転動防止に150~200kPa程度入れているとすれば300kPaくらい入れておき、一気に緩めてノッチを入れれば下がることはありません。

あくまで通常は……、の話です。

 

古い抵抗制御の車両で、主制御器のカムが駅停車時に最初のポジションへ戻りきらないことがたびたびある、そんな車両がありました。

起動位置に戻っていないと、ノッチを入れてからガラガラガラと音を立てて戻っていき、戻りきってようやく起動するので、勾配のある駅ではどうしても転がってしまいます。

こちらとしてもそういう事がよく起きることは頭に入れていますので、上り勾配の駅の場合は転動防止の際に全制動まで入れておき、全緩めにするのと同時にノッチを入れて転がることを防ぐようにしていました。

でもたまにやたらとポジションが戻るのに時間を要し、転動防止で全制動まで入れてポジションが戻る時間を確保しているのにそれでも足りず、後ろへ転がっていくことがありました。

一度どこまで後ろに転がるのかにも興味があり、ノッチを入れて起動するのを待っている間に車掌に車掌弁を引かれたことも。

車掌台がホームから外れ、さらに後方のポイント(分岐器)に乗りそうだったから車掌弁を引いたと……。

それからは転動防止で全制動に入れるなどして対策していても、制御器が戻りきらずに後退する時にはすぐにブレーキを入れて(この時は100~150kPaくらい)、予備直通ブレーキも入れます。

ブレーキハンドルを全緩めにしてノッチを入れて、稼働し始めたら予備直通ブレーキを緩めて起動させる。

これで後退することは避けられますからね。

車のMT車に乗っている(乗っていた)人ならばわかると思いますが、坂道発進でサイド合わせをするのと同じ要領です。

 

運転士経験者ならばわかると思いますが、予想に反して列車が後ろに下がり始めると本当に怖い。

怖くて慌ててしまうと非常ブレーキを入れがちですが、例に出した車種の場合は非常ブレーキを入れるとそこでまた制御器が止まってしまいます。

ポジションが元に戻っていませんから、非常ブレーキを緩めてノッチを入れてもそこからガラガラガラと音を立てて戻っていくので、やっぱり後ろに下がってしまいます。

なので後ろに下がって怖くても、運転士は慌てずに常用制動のみを使う。

そして予備直通ブレーキを入れた状態でノッチを入れて、起動しだしてから予備直通ブレーキを緩めるなんて方法を使うわけです。

 

元の記事は2022年12月5日、新大阪発白浜行き特急「くろしお」3号が天王寺駅で阪和線との合流部での空転(おそらく)が原因で進めなくなり天王寺駅へ引き返すトラブルで、あくまで私見ですしJRの車両のことについて知っているわけではありませんし、本当に有効かどうかは分かりませんが、予備直通ブレーキを入れて2ノッチ程度でゆっくり進めば何とか脱出できたのではないのかなと思い書いたものです。

慌てて非常ブレーキを入れたり、逆にフルノッチに入れてしまいがちになるのですが、常用制動と低いノッチをうまく使い、それでも心許なかったら予備直通ブレーキを入れて対処すれば、何とか出来たかもしれないなと……。

※「空転で動けなくなった「くろしお」原因は車両?運転士?」2022.12.09を書き直した記事です


スポンサーリンク

拙文ながら小説や体験談をAmazonから電子書籍とペーパーバック(紙の本)で販売しております。本のサムネイルは当ブログ内の著書紹介ページにリンクしています。

<体験談>

<小説>


運転士
シェアする
街道海月(かいどうみつき)をフォローする
タイトルとURLをコピーしました