電車を運転していると様々な動物と接触することがあります。
もっとも多いのはハトでしょうね。
ハトが車両前面の方向幕に当たってガラスを突き破り、幕がグチャグチャになったことがありますし、ヘッドライトに当たってケースが破損したこともありました。
ほとんどはフロントガラスや車体前面に当たるのですが、ハトが当たるとドン!という低い音が響くのです。
当たった跡は白くなって残るのでよく分かるのですが、当たり方によっては京阪特急のマークみたいに……。
朝のラッシュ時間帯に超満員の優等列車を運転していたとき、鉄橋上に白い大きな犬が歩いているのを発見。
軽くブレーキをかけて警笛を鳴らすと、列車の進行方向へ走って逃げだしました。
列車の速度のほうがはるかに速いためすぐに追いついてしまい、鉄橋を渡り切ったあたりでドン!
人間ならば非常制動で止めて処置を行うのですが、犬などの場合は止めずに運転を続けます。
※最近は小動物でも停止して車両点検を行いますが、昔はよほど大きな動物でなければ止めることはありませんでした。
そのまま終点のターミナルに到着したのですが、降りていく人が次々に私の顔を覗き込むようにして歩いていく。
私は何も気にせずに乗務場所を代わって折り返しで運転を行います。
休憩所に戻ると助役が私に、
「お客さんからかなりのクレームがあっったんだ。走行中に大きな音とすごい振動があった。スピードオーバーしてるのではないかと申し出た人もいるなど、かなり駅に苦情が来たようなのだが」
犬をはねた際にバラストを巻き上げて、車両の床下をバラストが飛び跳ねながら後部の車両へ行ったようです。
高速走行中の列車の床下にバラストが当たれば音も振動も大きくなりますからね。
ちなみに動物の遺体は保線課の係員が処置することになっています。
レールからやや離れたところに穴を掘り、犬を葬ってあげるのです。
運転士や車掌は人間を轢いたり遺体の処置を行っても何も出ませんが、保線課の係員が動物の処理を行った場合にはお清め料が若干出ていました。
※会社によってかなり違うようですが。
私ではありませんが、犬との接触で車両に損傷はなかったけど接触した際にバラストが飛んでいき、沿線の工場(倉庫かな?)のスレートの壁に穴が開いたなんてこともありました。
線路とその工場の間には幅7~8mの道路があり車も歩行者もそこそこ通るし、工場の周辺には民家も多かったから、下手すれば人的被害に繋がっていた可能性もありますよね。
この件の後、犬と接所しそうな時にはブレーキを入れるようにと会社側は指導してきたのですが、この件は朝の通勤通学客で満員の電車で起きていたので、あの超満員の状態で犬がいるからと言ってブレーキなんか掛けられるか!ってものすごくもめたんですよ。
今なら間違いなくブレーキを入れると思いますけど、まあ、平成の初めの頃はこんな感じでしたね。
ただ動物とはいえ当たりどころによっては車両故障を起こすケースもあります。
犬などとの接触で車両故障はあまりないのですが、イノシシやシカなど大型の動物との接触では故障は避けられないかもしれません。
最近はクマとの接触もよく耳にしますし、下車して点検しようにももしも生きていたら襲われる危険性が……。
たまたま遊びに行った帰りに乗車した他社線でイノシシと衝突し、電磁直通ブレーキの車両で制動管の栓を飛ばしちゃって運行不能になったことがあります。
私が勤務している会社での出来事ならば手伝いにも行くのですが、全く関係のない他社ですからじーっと待っていただけでした。
結局後続の列車に押してもらって(他車推進)次の駅まで行き、その駅で降ろされました。
犬とは違ってイノシシは頑丈そうな感じがしますからね。
2020年10月には京都丹後鉄道で動物との接触でブレーキが破損し、ノーブレーキ状態に陥ったケースもありました。
そう思うと特に動物の出没が多い地域を走る車両の前面には、動物と接触しても床下機器を損傷しないような頑丈なスカートでも取り付けないと防げないのかな。
クマでも跳ね飛ばすくらい頑丈な防具を備えて……、鉄道車両というより装甲車のようになりそうですが。
ちなみに私が運転士時代に接触した動物はハト以外に
スズメ・サギ(アオサギかな?)・カラス・犬・猫などです。
2018年10月16日の記事を再編集しています。