昔はわざとホームを飛び出す運転も、過走と誤通過と誤停車

運転士
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だらだらと書いてます……。

私は電車の運転士を26年ほどしましたが、その間には何度か過走(オーバーラン)したことがあります。

一度は過去に記事にもしましたが、ホームの売店のおばさんが目の前でバケツの水を軌道内に捨て、その場所から車両が滑走してホームをはみ出しちゃったなんてこともあります。

過走(オーバーラン)したのは売店の店員が……
過走(オーバーラン)の記事がネット上で見受けられたときに、それに対する感想みたいな感じでこのブログにも書いてきましたが、私自身が起こした過走についてはほとんど書いていませんでしたね。私は運転士現役時代に何度か過走(オーバーラン)をしています...

その他には、駅の係員がポイントの塗油作業の際にレールの踏面にまで油をべったりと塗ってくれたおかげで、次の駅ではブレーキが利かずにスーッとホームを行き過ぎたとか。

あと2~3回はホームを飛び出したことがあり、ブレーキが甘い(利きが悪い車両)車両だったからなんて乗務区の休憩所で言うと大先輩に、

「たしかにあの電車のブレーキは甘いが、それ以上にお前の考えが甘い!

なんて返り討ちにあったこともあります。

 

ただし停車駅なのに間違って通過しかけたとか、停車駅なのに通過駅と間違えてホームを行き過ぎたなんてことは一度もありません。

列車の種別を間違えたというのが、私にはどうしても考えづらく……。

でも周りにはいましたけどね、優等列車を担当しているのに普通列車を運転していると錯覚というか思い違いしちゃって、止めようとする運転士って。

先輩にこういう方がいて、本当によく通過駅に止めようとするのですが、車掌もみんな「この運転士はどこの駅にでも止めようとする」という事実が浸透していて、ブレーキを掛けた瞬間に車掌がベルを送るということをしていました。

この方に聞いたのですが、マジで運転中に寝ているそうです。

寝ていると言っても目は開いているようで、駅が近付くと無意識のうちにブレーキ操作をしているらしく、車掌からのベルで目を覚ますと自分でブレーキを掛けていることに驚くなんて言ってましたけどね。

私も含む、運転士って駅に近付いたらブレーキを掛けるっていうのは、習性として頭に刷り込まれているのかなと。

なので一瞬頭の中が真っ白になり意識が飛んでいても、運転士の習性として駅に近付けばブレーキを掛けるって言うのは身についていると思うので、停車駅なのに通過しかけたというのは理解できないんですよね。

 

マスコミ報道だとブレーキは掛けていたけど距離が足りずに駅を行き過ぎたのも、停車駅なのに通過駅と誤認してブレーキを掛けなかった事案もまとめてオーバーランと報道されていますが、後者は誤通過と言って止める意思がなかったものとして、私がいた会社ではかなりきつい処分がありました。

これに対して前者は過走として処理されていて、距離が足りずにホームを出ちゃった件に関しては昔は報告だけで終わっていたし、その後もお説教を食らって終わりというケースがほとんどでしたが、近年は誤通過と同一視されることが多くなっています。

TASCがもっと広く普及すればこういうことはなくなるのでしょうが、そうなってくれば今度は運転士なんていらないという世界になるでしょうし……。

 

私が運転士になって数年くらいまでは、ある時期になるとわざとホームからはみ出すように運転する、そんな光景がよく見られました。

車掌が見習に就いている期間限定ですから、1年のうち1カ月間限定でしたが本当によくやってました。

目的は列車が所定位置を超えて止まった時の車掌の処置を車掌見習に覚えてもらうためで、車掌の指導員(師匠)と打ち合わせして、○○駅の上りで滑る(過走)なんてやってました。

もちろん私が車掌見習の時にも行いましたよ。

手順は教習所で習ってはいますが、お客さんが乗った電車が所定位置を超えるわ、限界線も越えて行って先頭車両がホームを行き過ぎているとわかると、とにかく焦るばかりでしたよ。

車掌見習の終盤になると訓練列車を出して所定位置を行き過ぎた時の処置やら、手前に止まって後部車両がホームに入っていない時の訓練もするのですが、あくまで訓練ですから言ってみれば台本通りに進んでいきます。

「次、街道君は○○駅で過走したとの想定で訓練を行ってもらいます」

っていうのと、電車が所定の停止位置を行き過ぎるなんて頭の中にまったくない状態で、スルスルっと電車が止まらずに行き過ぎるのとでは緊迫感が違いますからね

今は少し行き過ぎた、間違えて列車が止まればネットニュースで全国に知れ渡る時代、車掌に覚えてもらうためにわざと行き過ぎるように止めました、なんてこと言うとメチャクチャ叩かれるでしょうね。

 

ちなみに運転士がわざと停車位置を行き過ぎるように止めるのって、案外難しいものです。

訓練の時でもそうですが、やっぱり所定の停止位置にある停止目標を見ちゃうので、習性として止めようとしちゃうんですよね。

なのでわざと行き過ぎる時って、その勢いだったらホームの端までに止められるだろうってくらい、かなりゆっくり出ていきますので本当の過走の時とは全然違います。

でも車掌見習はそんなことを知りませんから、やっぱりドキッとして慌てるんです。

ある先輩の運転士が訓練列車を担当した時に、

「行き過ぎるのって難しいよな」

なんて話をしていたら超ベテランの方に、

「お前の普段どおの運転をすれば何も問題ないだろう」

 


 


 

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