幼稚園などの送迎バスに園児が残され、そのまま駐車していて熱中症でお亡くなりなるという痛ましい事件が何件かありました。
バスと言ってもハイエースクラスの車両ですから、運転手が数歩車内に歩み寄れば全体が見渡せるのにと思いながら当時この事件のニュースを見ていました。
それに相手は子供で酔っぱらっていることもないわけだし、そこは運転手や先生たちが責任をもって完全降車を確認しないとなあ。
路線バスの場合は夕方から夜間のケースが多いですが、残されたまま車庫へ引き上げるといったこともありますね。
バスの場合は運転士1人ですべてを対応するわけですから、それも子供から大人まで、酔った人も含めて。
車内を後まで歩いて見るだけだろと言う方もいるでしょうが、バスのダイヤってかなりシビアで道路状況ですぐ遅延するし(旅客状況の遅延もかなり多いけど)、そういうことを含めて何もかも運転士1人に責任を負わせるはどうなのかなと……。
鉄道の場合でも入庫させた車内に乗客が取り残され、翌朝の出庫時に乗務員が気が付いたという案件も発生しています。
ここからは私が勤務していた会社(乗務区)の話になります。
私がいた乗務区では、車掌も運転士と同様に出入庫をいっしょに行いますし、出入庫だけを担当する構内運転士と言った職種もありませんでした。
基本的に車内の乗客への対応はすべて車掌の仕事となっていて、6両編成だろうが8両編成だろうが12両編成だろうが旅客の降車を確認するのは車掌の仕事です。
極端な言い方をすると、12両編成の先頭車両で熟睡中の旅客を起こしに行くのも、すぐ近くに乗務する運転士の仕事ではなく最後尾の車両に乗務する車掌の仕事です。
ただ入庫の時間が遅くなるのを嫌って(車庫への入庫時間も当然決まっている)運転士が仕方がなく起こすのを手伝うのですが、運転士が手伝っているという概念が無くなったどんどん車掌が増えてきて、例えば6両編成の車両を入庫させる時に車掌の方から、
「後3両は僕が見ます」
と運転士にごく普通に言う車掌が増殖して、
「ということは、運転士に前3両の客を降ろせと命令しているのか!客を降ろすのは車掌の仕事で運転士は仕方がなく手伝ってあげているだけだぞ!」
なんて教えたとしても、この運転士何を言っているんだろう、みたいなポカーンとした表情のままの車掌も多かったです。
ホームに停車中にすべての旅客を降ろせればよいのですが、たまに降ろし終わって乗務員室へ戻る間に乗ってくる人もいるので、そのまま車庫へ連れて入ることもあります。
駅員が降車の手伝いをしてくれれば良いのですが、会社側の考えとして〝乗客の対応はすべて車掌の仕事〟なので、駅員が配置されるのは年末対策で24時以降に入庫する列車だけ。
それ以外は基本的に車掌が一人で降車させていくことになってます。
車庫に入庫すると本来は車掌が車内の点検を行うのですが(嘔吐物と忘れ物)、これも面倒なのかほとんどの車掌がしないので運転士が仕方なく車内を見回ったりしています。(あくまで私がいた乗務区の話ですが)
運転士も早く上がりたいと思い始めると、時間がかかる車内なんて通らずにすぐに車両から降りて通路を歩いて帰る人もチラホラ……。
私は車内を通って忘れ物と嘔吐物の有無をチェックしていましたが、たまにがらがらのシートに横になって眠る人がいて、驚いて叩き起こすことも……。
入庫時に検修庫(ピット)へ入ったり、通常の留置番線でも車両課の点検がすぐに行われることがあるのですが、点検の邪魔にならないように乗務員は直ちに車両から降ります。
その代わりに車両課の人が車内をすぐに見回って、
「おーい、車掌さん!お忘れ者」
車内に取り残された人がいると、車両課の人に呼び止められたりします。
車庫などの場合には、こんな感じで車内に取り残されている人がいないのかのチェックを行います。
それで車庫から駅近くまで歩いて送り届けて、あとは勝手にしてねという感じですね。
「無断で車庫まで乗越した奴がいたのか」
なんて冗談めいて乗務員同士で話をするほど、少なくはなかったですね、車庫まで入る乗客は。
酔った客ではなく、空いていて座れると思って乗り込んでくる人もいましたしね。
女性3人組がこのパターンで入庫列車に乗ってきて、車庫に留置後に車内を通ると3人で楽しげにおしゃべりしているなんてことも。
異変に気付いて、
「この電車はどこへ行くんですか!」
なんて聞いてきたけど、
「勝手に乗ってきて何を言っているんですか!」
と答えてちょとした口論になったことも。
最終電車などで車庫へ入れずに駅ホームに留置する場合も基本は同じですが、乗務員がすべての客を降ろした後に留置の処置を行い、その後に駅の助役が懐中電灯を持って車内の点検を行います。
留置の処置ですからパンタグラフも降ろしているので、車内は真っ暗だから懐中電灯が必須になるのです。
でも助役が見て回るのは忘れ物と嘔吐物がないかなどを見て回るだけ。
何せ翌朝はそのままの状態で営業運転に使用されますから、飲み物がこぼされて床が汚れていないか、また嘔吐物がないかのチェックをきちんとしておかないと、朝から不快な気持ちでお客さんが乗車することになりますからね。
そう言えば、一旦引き上げ線に入る列車の車内に、朝の早くから酔いつぶれてるおじさんがいたので引きずってホームに出したのですが、ホームのベンチに自力で座ることができない。
ホームでそのまま寝かせて転がって軌道内へ落下すると怖いので、ベンチへ腰払い気味に投げて無理やり座らせたことも。
「車掌が泥酔客な投げていた」
って苦情が入りましたけどね。
あくまで私がいた会社(乗務区)の話になりますが、泥酔者には複数人で対応するなんて表向き公表していますが、実際には車掌の仕事だから1人で何とかしろ!て放置状態ですが、車庫で一晩を明かさせるような事態になっていないなと。
危険と紙一重かもしれないななんて思います。

