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回生車は省エネではあるけど、やみくもに導入したところで…

運転士
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回生車に関する記事はこれまでにも書いてきたので、重複する部分はあると思いますが……。

 

回生車って簡単に言えば、モーターを使ってブレーキをかけるわけで車で言えばエンジンブレーキってことになるのかな。

通常走行時には電気を流してモーターを回転させて加速させるわけですが、電気ブレーキでは逆に回転する力をモーターに加えて発電するすのですが、いわゆる電気ブレーキ(発電ブレーキ)は抵抗器へと流して熱として大気中に放散させます。

真夏だと抵抗器を積んでいる車両からは熱がゆらゆらとかげろうのように見えたり、抵抗器の真上に乗車しているとクソ暑かったりします。

車両の床に敷いているというか貼っている敷物が薄いと、抵抗器によって焦げたりもします。

さすがに焦げた様子はあまり見る機会はありませんが、〇急の3000系の床材が見事に焦げているのを何度か見たことはあります。

 

この抵抗器で熱として空中に放散している電気を再利用できれば省エネにつながる、ということで近年は大半の車両が架線へ電気を返す回生車両になっています。

架線へ電気を返すことで他の車両がその電気を使い、省エネというか電気代の節約にということですから、そりゃあどこの社局でも導入するわけですが……。

 

 

ある変電所が受け持つ区間(セクションからセクションの間)に複数の電車が走行していて、それらの電車がそれぞれ駅に停車するためにブレーキをかけました。

これらの車両が回生車両でほぼ同時にブレーキをかけた場合、架線電圧は通常の1500V(回生車が多く走る路線では通常時から1400Vくらいにしていることも)から一気に跳ね上がり、1700Vとか1800Vあるいはそれ以上に跳ね上がることがあります。

車両から回生しようとする電気の電圧が1500Vだった場合、電位差によって架線へ電気を返すことができません。水と同じで低い方から高い方へは電気は流れません。

電車としては回生ブレーキが正常に効かない場合(回生失効)には、回生ブレーキと同等の制動力を空気ブレーキ(制輪子・ブレーキシューで車輪等を抑える)でカバーすることにはなっていますが、机上の計算では問題なく所定の制動力が得られるはずが、実際には運転士が椅子から飛び上がるほど制動力が足りず、過走(オーバーラン)する危険性が高くなったりします。

顕著に表れたのが、阪神大震災時に御影~王子公園(後に三宮)間にVVVF車両の8000系ばかりを投入しメンテナンスの簡略化を図りましたが、この時に90キロ程度の速度から上下線でほぼ同時に停車となる春日野道駅では回生失効が頻発し、とてもではないけどまともに止められない事態となっていました。

聞いたところ、下り列車は早着気味、上り列車はやや遅らせ気味にして、同時にブレーキを使わないようにして回生失効を防いだり、配電盤の回生ブレーキのNFBを落としていたなんて話も。
※兄と友人たちから

夙川~岡本間は回生車両と発電ブレーキの車両が1本ずつ閉じ込められていて、回生車両がブレーキをかけるタイミングで発電ブレーキの車両はノッチを入れるようにタイミングをずらしていたなんてことも聞きました。※早発や延着していたのかは……。

 

こういうこともあるので、社局によっては回生ブレーキと発電ブレーキを使い分けできる車両も投入されているし、意外と回生ブレーキって運転士泣かせな面もあったりします。

 

 

基本的には運転本数が多い路線だと回生車のメリットが生かされるのですが、ある程度の運転本数があっても生かされないことも。

よく耳にしたのは、変電所の容量の関係で回生車両を走らせることができる割合に制限がある。

一本も運転できないわけではないけど、一定の割合以上の回生車両を走らせると変電所がダウン?パンク?するなんて話です。

真実かどうかは知りませんが、〇急〇塚線の10両編成の電車が長らく発電ブレーキの車両に限定されていたのも発電所の容量の関係だった……、なんて話を聞いたことがあります(本当なのかな??)

ひょっとすると今でも変電所の関係で回生車両の投入が難しいなんて路線もある?

 

車両側の回生効率を上げたとしてもその電気を使う車両がいなければダメ、そこで駅施設の直流化などによって車両以外が回生電力を使う仕組みを構築したり、回生された電気を貯める設備「回生電力吸収装置」(回生電力貯蔵装置)を導入する社局もあります。

発電ブレーキのようにせっかくの電気を熱にして空中に放散なんて確かにもったいない、だから回生車両のほうが良いというのは正論ですが、ただやみくもに回生車両を入れてもまともに電力を回生できなければ、価格の高い回生車両を導入したところでもったいないだけ。

それに発電ブレーキは電気を熱として放散するけど安定した制動力が得られるのに対し、回生車で回生失効して結局空気ブレーキを使い、制輪子・ブレーキシューを減らすわりに制動力不足で危ない運転になることを思えば、発電ブレーキのほうがはるかにマシかなとも思えます。

ただやみくもの回生車両を導入する前に、変電所などの施設を対応できる状態に整える。

これが大事だったりするんですよ。



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