運転士の思い込みと確認不足でドアが開いたまま市電を発車・鹿児島

運転士
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まずタイトルにした鹿児島市電の話の前に「とさでん交通」での事故の話。

「とさでん」の鏡川橋駅で下車した女性が、降りた電車の後方にまわって軌道を横断しようとした。

電車の最前部側って今から電車が動き出すだろうから、わざわざひかれる危険性が高い側から軌道を横断しようとする人はまずいないので、後部に回るのは普通のことでしょうね。

※ここでは軌道を横断する是非は問いません……。

下車した電車の後方側へ回って軌道を横断する時、反対側からやってくる電車の接近を確認できる位置は、当然ですがほぼ反対側の軌道に入る寸前のタイミングになります。

その反対側からやってくる電車の運転士が軌道を渡ろうとする人を発見するのも、当然ですが自身が運転している軌道上に人が入ってから。

かなり接近していれば運転士が非常制動の措置を取ったところで事故の回避はまず不可能です。

離合する列車の陰から人が出てきて反対線路を逆方向へ向かう列車と接触する事故、これを私がいた会社では離合負けと呼んでいました。

例えば踏切の遮断桿が降りているのに、北行きの電車が通過した瞬間に踏切内へ侵入して南行きの電車にひかれる、っていうのが離合負けの典型的なパターンです。

このために踏切等で列車と離合する際には離合負けを回避するために気笛を鳴らします(義務ではありませんが)

踏切外でも軌道内で作業している作業員が、左右の安全を確認せずに軌道を横断しようとして侵入してくるケースもあります。

電停出発時と違い、路面電車が離合負け回避のために気笛を鳴動させるというシーンはあまり見ませんし、本数が多い区間で離合負け回避のために気笛を鳴らし始めると、それこそ騒音問題としてクレームが来るでしょうし、軌道を横断しないようにとしか言えないでしょうね。

 

さてと、本題の鹿児島市電でのインシデント。

報道によると2025/11/25の午前9時45分ごろ、宇宿一丁目電停で乗降を終えた際の事。

全てのドアを閉めたつもりが扉が閉まるときの注意喚起音が鳴りやまない。

おかしいと思って車両中央部の入り口のドアを何度か開閉し、確実に閉まったことを確認。

それでも音が鳴り続けるので、

「きっとこの安全装置が故障したに違いない、この装置を切って運転しよう」

と思ったのか注意喚起音を止めるために安全装置のスイッチを切り出発させた。

30mほど走ったところで乗客に、「出口のドアが開いたまま」と指摘された。

出口側のドアは運転席のすぐ横にあるのに、見ていなかったというか、自分では閉めたつもりになっていたのでしょうね。

幸いケガ人もおらずインシデント(事故に直結する可能性のあったミスなどの事象)でとどまりましたが、何やっているんだと思いますよ。

鹿児島市電は今年衝突事故も起こすなど重大な事故が続発していて、局内の雰囲気は相当悪く連鎖反応的にこういった大きなミスが発生したのかなとしか思えません。

自責事故が何件か発生して局内がピリピリした空気に充満されると、乗務員が雁字搦めにでもなったかのように事故やインシデントが途切れなくなるっていうのは、私自身も経験しています。

本当に重くなるんですよ、職場の空気が。

そこへ市交ならば局上層部から重大インシデント発生についてとか、全乗務員に今一度基本動作の徹底を指示するなんて警告の表示が掲示されると、より一層職場の空気が重くなって悪循環に……。

もちろん何もしないわけにはいきませんし、掲示でずっと目に触れるようなことをせずに、一人一人に対して上からの目線ではなく落ち着いて操業するようにと訴えていくしか打開できないんですよね、私の経験から言うと……。

 

ドアの閉扉ができていないのに閉まっているはずだと運転士が思い込み、確認もせずに指令に報告しないまま回路を切り替えて発車させた件を思い出します。

阪急甲陽線におけるインシデント(PDF)

人って「したはず」だと思いこむと、確認もせずに「故障した」と思い込んで行動に出るのでしょうかね。

そう思うと家を出る時に、

「カギ閉めたかな?」とか「ガス切ったかな?」と、再確認に行く人の方が運転士という職には向いているのかもしれません。


 


 

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