利用者にとっては本当に迷惑としか思えない、それが人身事故。
いろいろと思い詰めた末でのことだし、お気の毒だという気持ちももちろんありますが、予定していた行動に支障が出るなど、利用者にとってはテロと大差ないと感じるものじゃないかな。
もちろん乗務員や駅員だって本音で言えば迷惑だし、本当だったら不必要な仕事が増やされるわけですから、いい気がするわけがない。
乗務区の休憩所でマジで怒っている乗務員もいましたから、やっと仕事の終わりが見えてきたのにいい加減にしろ!って。
これまでにも何度か書いてきましたが、昔は人身事故が起きても事故の当該列車は現停10分以内、通常は7分で運転再開で、早い時は5分で運転再開なんて猛者もいました。
10分以上かかっていると休憩所では、
「今日のダルい運転士は誰や!」
なんて非難の声も聞かれるような状態でした。
ところが自体が一転したのは、2002年(平成14年)11月6日に発生した「東海道線救急隊員死傷事故」から。
以前に記事にしていますのでよろしければこちらもご一読ください。
昔も運転再開までに時間を要することがもちろんありました。
ご遺体の一部が見つからない時や、ホームと電車の間に挟まったり、電車の床下から出せない時などですね。
ご遺体(ご遺体と書いていますが、完全にバラバラでどう見ても亡くなっていることが一目瞭然な場合を除き生存者として扱いますが、ここではご遺体と書いていきます)がバラバラになっている時は、すべてのパーツを集めるまで運転再開はしませんでした。
川の近くの駅での飛び込みで、ご遺体の一部が川で流されたのか見つからなかったことがあり、この時は30分以上探し、警察に許可をもらって運転再開したケースもありました。
ホームと電車の間に挟まった場合、まさか挟まった状態で電車を動かすわけにもいかず、車体を大勢の人で傾けるとか、レスキュー隊に救助を要請するので運転再開までには相当時間がかかります。
電車の床下から出しにくい時もあります。
台車あたりに絡まっているとか、床下の機器に挟まっている場合などです。
救助に手間取り、その後に現場検証などが行われますので、1時間以上は確実に止まることになります。
これは乗務員や乗務区の助役などはみんなわかっていることですし、人身事故の時にもよく話に出てきたのですが、
「○○踏切で人身事故? あそこはどこの警察の管轄だ?」
「あそこは○○市ですから、○○警察署の管轄ですよ」
「○○警察か、だったらそれほど長くは止められないからまだマシか」
「△△踏切で人身事故だって」
「△△踏切って△△警察の管轄でしょ? これは長引きそうですね」
これは本当によく言っていたのですが、事故現場を管轄する警察署がどこなのかによって運転抑止の時間が違うのです。
これに上記に書いたような現場検証に入るまでに長い時間を要するケースが当てはまると、軽く2時間越えの運転停止状態が続きます。
もちろん事件性が疑われるときや、運転士のブレーキ操作に疑義が生じる時も現場検証が長引くことはありますが、ほとんどはご遺体の問題にプラスして警察署の考え方の違いによる部分が大きかったりします。
今日は2025年11月6日、尼崎で起きた東海道線救急隊員死傷事故から23年。
もう昔のように10分程度の現停で運転再開なんて、夢のまた夢の話ですね。
