養老鉄道で20代の駅員が2025年6月6日に広神戸駅から北神戸駅までの1.6km、そして7月6日には美濃本郷駅から東赤坂駅までの7.7kmを、甲種動力車免許を所持していないにもかかわらず営業車(旅客が乗車)した列車を運転したと発表しました。
国土交通省中部運輸局は保安監査を実施し、行政指導などを検討しているとも報じられていますが、それは当然のことでしょう。
報道によると、列車はワンマン運転だがこの駅員は切符販売のために乗務しており(営業のみ担当でドア扱いなど運転関係はタッチしていない)、走行中に運転席に入り運転させてほしいとお願いした。
担当していた運転士が扉扱いのために席を立ち、運転台とは逆側(いわゆる車掌台側)にいるすきにこの駅員が運転台に座り列車を運転した。
担当運転士は横に〝添乗〟する形になったが、途中で運転席に座るなと言って運転を代わったようです。
今回の件が発覚したのは、11月3日に他の社員から駅員が運転台の機器を触っているとの通報が社にあったこと。
その後社で調査して無免許での運転が発覚したらしいです。
当該駅員はこれまでに二度、運転士の見習課程を受けているが二度とも途中で中断。
養老鉄道の見習課程がどうなっているのかはわかりませんが、養老鉄道に教習所がない、または他社に委託せずに教習課程を行うとなれば、学科教習は自分で勉強して運輸局で受験、実技のみ指導操縦者(指導員)に数カ月間指導を仰ぐ形になります。
一部報道では今年2月から少しだけ実技見習は受けていたようですので、基礎中の基礎の部分のみはすでに習ってわかっていたのかもしれません。
ただ見習を辞めた際に「祖父母の死去」が理由だと会社に伝えていたようですが、この理由も嘘だったようですし、ちょっと難がある人なのかなと個人的には思います。
会社に国交大臣から動力車操縦者養成所の指定を受けた教習所等があれば、学科教習は教習所等で行い、学科教習が終了後に指導操縦者(指導員)の指示を仰ぎながら営業車で実技見習を受けるのが一般的です。
この場合は学科試験も実技試験も社内ですべて行われます。
教習所等がない会社の場合、関係の深い会社(親会社だったり、資本関係で繋がりがあるなど)に運転士の養成を委託し免許を取得、その後自社に戻ってから学科や実技の見習を受けて運転士なるというケースもあります
運転士の見習は〝無免許〟状態ですが、指導操縦者が指導しながら運転技術を磨いていく分には問題ありません。
動力車操縦者運転免許に関する省令
第二章 運転免許
(運転免許)
第三条 鉄道、軌道及び無軌条電車の係員は、地方運輸局長の運転免許を受けた後でなければ、動力車を操縦してはならない。ただし、運転見習中の係員が運転免許を受けた者と当該運転免許に係る動力車に同乗してその直接の指導を受ける場合又は本線を支障するおそれがない側線において移動する場合は、この限りでない。
自動車のような仮免許みたいなものはありませんし、シミュレーターで基本的な操作を習ったとしても、天候や乗車具合のほか各車両ごとの癖もありますから、指導員の指導を仰ぎながらお客さんが乗る営業車で訓練しないと運転士として使いものにはなりません。
なので指導操縦者が必ず横に添乗し、きちんと指示を与えて運転士見習であっても安全に運転ができる体制を取るわけです。
もちろん、お前がなぜ指導操縦者なの? お前の危なっかしい運転をまずはどうにかしろよ、と思ってしまう指導操縦者もいますけど、それでも基本は熟知しているはずなので……。
ここからは昔の話です。
(と書いておかないと、今と昔を混同するのか変な反応を示す人も多い)
私が車掌をしていた昭和50年代から運転士になった昭和の末期、さすがにお客さんを乗せた列車ではありませんでしたが、夜間の回送を車掌に運転してもらうことは多かった。
回送を出発させしばらくすると、運転士から前に来いと指示が出されます。
前まで歩いて行くと座れと言われて、車掌が運転をするのです。
運転と言っても電車はこんな感じで走っているって言うのを体感する程度で、100キロ以上で走るとこんな感じだとか、非常ブレーキを入れてもこんなに止まらないんだとか、電車のブレーキが自動車やオートバイと比べてどれほど制動力が弱いのかなんてことを覚える感じでした。
あとは踏切通過時や駅通過時の怖さだとかを、車掌のうちから知っておくって感じでしたね。
なので、今回の養老鉄道とはまた意味合いが違うかもしれませんが、無免許で車掌が運転していたのも事実です。
ただ車掌による無免許運転が発覚し報道されたこともあり、とてもではないけど車掌にハンドルを持ってもらうだなんてことは怖くて、ここ2~30年はどこの会社でもないと思いますが。
なので養老鉄道の運転士が運転席に座った駅員に対して、すぐに立つように指示しなかったのも残念なんですが。
私がいた会社でも、運転士見習中に自己都合で見習を断念する人はいました。
その多くは病気やケガだったと思います。
制度上は翌年再び運転士登用試験を受けて合格すれば運転士見習になれるのですが、最初に運転士見習を断念した時点で車掌に戻してはくれず駅勤務となり、運転士登用試験の受験資格自体がなく運転士をあきらめざるを得なかったです。
なので運転士見習中は特に事故によるケガには注意を払うように言われていましたね。
見習中は自動車やオートバイの運転を控えろと、それは口酸っぱく言われていました。
ちょっと話はずれますが……。
今回の件に対して、Yahoo!ニュースのコメントにエキスパートとしてコメントを出した鉄道ライターの伊○薫さん。
Xで運転士見習はどこの会社でもごく普通に営業列車で見習を行うぞ!みたいなポストがあり、それに気付いたのかは知りませんが書き直し、
