まだ20代だった車掌をしていたころ。
普通列車を担当していてある駅で優等列車の待避を行った。
優等列車はやや遅れて出発し、車掌スタフを確認すると担当の普通列車の発車時間まで30秒ほどしかない。
反応灯(出発反応標識・レピーター)が点灯した時点で出発時間を回っており、手笛を思いっきり吹いてドアを閉めようと思ったけど、ずっと車両に沿って歩く人がいる。
もう一度手笛を吹いて、車外マイクに切り替えて、
「車内へお入りください、ドアを閉めます!」
放送をしてもそれでも車内へ入る素振りがない。
こうなると車掌としては、この旅客は乗車する意思がないと判断するしかなくドアを閉めます。
ドアを閉めてもまだ車両に沿って歩くその旅客。
こうなると危ないだけで本当に迷惑なやつだと思うわけですが、車両とはある程度の距離があったので運転士へ出発合図を送り、1分ほど遅れて動き出しました。
出発監視をしている間も車両に沿って歩くので、いつでも車掌弁を引ける体勢を取っていました。
列車が動いだしてしばらくしたころにその当該旅客は急に列車に接近して立ち止まり、私のほうへ手を振り始めます。
乗せろという合図なのかもしれませんが、手笛を吹き、おまけにマイクで注意喚起も行ってから列車を出発させていますしこちらに落ち度はなく、当然ですが列車を止める必要性もないしその当該旅客を乗車させる必要性もない。
出発監視する私がその当該旅客の横に達したときに、
「何勝手に閉めとんじゃ!」
謝る必要はまったくないし、私は心の中で
〝こいつ、〇カ?〟
って本当に思っていました。
数日してから乗務区の指導担当に呼ばれ、
「〇月〇日、○○列車を担当していたのは間違いないな」
乗務手帳と仕業行路表を照らし合わせ、たしかに乗務していたと答えると、
「電車に乗ろうとしたら急にドアを閉められ、危うくドアに当たってケガをしそうになったというクレームが郵送で本社へ送られてきた。日付と駅と時間を照らし合わせると街道君が担当したわけだが、そういう旅客がいたことは記憶にあるか?」
それで手笛の吹鳴が2回と車外マイクで注意喚起をしたことを説明し、それでも乗る素振りを見せなかったから閉扉したことを説明。
ついでに乗り組みの運転士にも事情を聞いたようで、私の証言との整合性が取れたので無罪放免となりましたが……。
私は車掌をしていた4年間で同じようなケースで数回本社にクレームを入れられたし、駅などへ直接クレームを入れられたことも何度か……。
会社がきちんとクレーム処理の際に説明しておれば良いけど、毎回当該乗務員を再教育しますって、まるで乗務員に100%の非があるみたいな対応するから、旅客にも会社に対しても不信感ばかりが高まって、今度は超不機嫌な顔をして乗務するという悪循環……。
まずは基本的なことから。
駅に表示されていたり、アプリ等で表示されている出発時間は列車が動き出す時間です。
その時間へ駅へ行けば乗れる時間ではないし、
ドアを閉める時間でもない。
あくまで列車が動き出す時間ですから、乗車しようと思えば出発時間より前に駅にいなければ乗車できません。
これは鉄道だけではなく、バスなど公共交通機関ではこれは基本中の基本。
※なぜか会社の管理者がこの基本中の基本を理解していなかったりするが……。
走ってホームへ行ったのに待ってくれなかったなんて文句を言う人がいますが、列車を遅らせて乗せて満足するのはその人だけで、その他大勢の人には迷惑が掛かっているということがわからないのかなと。
たまに動き出した車両の車体やドアを叩いて、列車を止めろ!私を乗せろ!みたいなリアクションをする人がいますが、それってかなりの危険行為だということがわからないのかなって。
仕方がなく非常ブレーキを列車を止め、引きずりなどの重大事故ではないと確認すれば、列車から離れるように指示します。
都会の駅だと少し列車が動き出せば先頭車両はホームから外れているでしょうから、ドアは開けられませんしね。
こういうことを書くと、○○という会社ではいつも待ってくれる!なんて意見が出てきますが、それってクレームの後の会社の指導が面倒だから待っているだけ。
そちらばかり気にしながら乗務している人の場合は定時運行することが稀になり、今度は遅延に関するクレームが寄せられて会社から指導され、結局はメンタルをやられて退職……。
バスではよくあるそうですが、バス停近くにいたのに乗せてくれなかったとかなんて言うのは、乗務員からすれば乗るようには見えなかったし、私のケースと同じなんですよね。