車掌や運転士になることを小さなころから夢見て鉄道社局に入り、念願が叶って乗務員になれた。
そんな人は少なくはありません。
私はただ昇給させるために車掌や運転士になったというのが本当のところで、鉄道社局の運輸の現業部門に配属されればこの道を歩むのが手っ取り早いから……。
私は小さなころは鉄道会社に入りたいだなんて思ったことはなく、まったく違う職業に憧れていましたから。
昨日(2025年4月23日)ネットニュースで知ったのですが、こういう案件があったようです。
今回の流れを見ていると、ちょうど20年前の2005年4月25日に発生した福知山線脱線事故を思い出してしまいます。
たしかあの大惨事の前に車掌とのやり取りがあって、過走(オーバーラン)した距離をまけてほしいと懇願して……。
今回の件でも運転士の心理というよりは、ミスが同僚に知られてしまう恥ずかしさや、会社の〝教育〟、もう運転士を続けられないのではという恐怖心が勝っていたのかなと思います。
同様のミスを防ぐために、いつどこの駅でどのような事が起きたのかを詳しくすべての乗務員に周知徹底していきますし、当然ですが同じ乗務区にいれば誰がやってのかななんて全員が知っていますから、そういった意味では恥ずかしいのは仕方がない。
会社による〝教育〟がどの程度効果があって再発防止に役立つのかはわかりませんし、それに過去に〝教育〟を受けた者は、
「今度はより厳しく詰められるのではないのか」とか、
「もう匙を投げられて、他部署に半強制的に異動させられるのではないか」
そんな恐怖心を抱きますし。
※JR北海道の〝教育〟の内容はまったく知りません。あくまで私がいた会社での経験からの推測です。
例えばミスですが、停車駅に止めるつもりがあって実際にブレーキも入れていた。
でも天候やレールに浮いた油など、+αの部分の考慮が足りずに行き過ぎて止まった場合は会社として教育して、再び運転士と活躍できるように応援するというのは正解だと思います。
でも、停車駅か通過駅かの確認を漫然としているのか、はたまたまったくしていないのかは知りませんが、停車駅なのに100m以上も行き過ぎたり、逆に通過駅なのに止めてしまう運転士ってどうなのかなと思うんです。
確認はしていたけど一瞬エアポケットに入って操作が遅れた、というのは睡眠不足や過労の影響から仕方がない部分があるとは思いますが、停通の確認自体を忘れるような運転士は教育ではなく、他の部署を紹介してあげるほうが良いと思うことも。
運転士時代に職場でもよく言われてたのですが、教育してどうにかなる人と、教育ではなく早々に放り出すほうがその人のためになることもある。
「あいつ、今回のミスは温情で残してもらえたけど、必ず大きなミスをするぞ」
そんなことを言われている人ってこれまでの経験から言うと100%、脱線とかポイント割り出し、信号無視などの重大事故を起こしています。
逆に、
「このミスで他所へ飛ばしてどうするんだ! まともな乗務員がいなくなるぞ!」
なんて声が上がることも少なくはありませんでした。
会社の管理者側よりも同じ職種の同僚のほうが的確に人を見ていた……。
車掌だとホームの無い側のドアを開けてしまう人は、やはり他所へ異動させてあげるほうが良いと思います。
今回のJR北海道の運転士が、車掌や運転士に憧れて夢を叶えたのかどうかはわかりませんが、合図って重要な意思疎通のツールの一つで、それを忘れるというのはやっぱり怖いです。
私がいた会社だとブザーではなくベル合図でしたが、たまにあるんですよ、車掌からのベル合図が来たかどうかがわからないことが。
そういう時は必ずインターホンで車掌に問い合わせるということをしていました。
だって、車掌がドアを閉めたものの車両に接近している人がいて合図を送れない、そんなこともあり憶測で取り扱うのは危険ですから。
だから個人的には、これ以上大きな事故を起こせば本人が最もつらい思いをするわけですし、今回の件を機に他所へ異動させてあげるのが会社としては正しい判断じゃないかなと思います。
もちろん社局が効果的な教育を行えるのであればそれがもっともいいのですが、その人が持って生まれた性格までは教育では変えられません。
それに(私がいた会社では)福知山線での事故の後も、精神論に終始した教育しかできていませんでしたから教育に頼るのも無理なのかなと。
(指差喚呼は指先まで神経を集中させて……、一度の確認喚呼でミスをしたのならば二度に増やせ……みたいな)
一度のミスですぐに他所へ飛ばすのは違うと思いますが、複数回同様のミスをしたとか、そのミスの内容によっては教育ではなくすぐに異動を打診するほうが良い。
そうすれば福知山線脱線事故も起きなかったかもしれない……。
偉そうに書いてきましたが、では私自身は乗務という職種が合っていたのかというと、合ってはなかったでしょうね。
たまたま大きなミスに遭遇しなかったけど、一つ間違えれば危なかったなんて事象は本当に多かったですし、たまたま横目でチラ見して助かったとか、たまたま警笛を鳴らして助かったなんてことが多かった。
それに、潔く辞めるほうが良いと決めていたミスのラインがあって、たまたまそのラインに至らずに済んだだけでした。