多くの鉄道社局で今も実施していると思いますが私が配属されていた乗務区でも、担当するすべての路線では、始発と最終電車には必ず監督者や保安職員が添乗していました。
本線も支線も関係なく上り下り必ず1往復。
最終電車のほうはどちらかと言えば車内のお客さんの対応が主だった気がしますが、それでも最終電車が通過してから始める線路内での作業に際して、作業の責任者に対して最終電車が通過したことを知らせる書面を手渡したりしていましたし、最終添乗を行っている監督者から、
「○○踏切から300mほど先で停車」
と言った指示を受けることもありました。
乗務前に運転通告券で線路途中での停車を指示はされていましたが、忘れて通過しちゃったら作業に入れませんからね。
作業の責任者も線路内で懐中電灯を頭上で左右に振って運転士に知らせていたので、それを見れば停止することを思い出しはしますけど。
ただ最終添乗のほうは監督者や保安要員も気楽に横に乗っていることが多いし、動免を持っている監督者や保安職員はハンドルを持たせてほしいとお願いしてくることも多く、私が横に添乗するということも多かったです。
始発添乗は線路状態の確認のために添乗します。
それこそ軌道内に何か投げ込まれていないかとか(自転車とか側溝のフタとか)、線路沿いの樹木が傾いて列車と接触する危険性はないかなどの確認もありますし、駅の照明はきちんと点灯しているか、ホーム上で寝込んでいるような人はいないかなど、意外と見る箇所が多かったです。
特に前夜に強風が吹き荒れていたときなどは途中で停車して監督者を降ろし、線路内に飛んできて運行の支障となる物を撤去するという作業もよく行っていました。
また時には線路内作業が遅れていて始発電車が走り出すギリギリまで工事が行われていることも多く、始発添乗の監督者が工事現場で降りて様々な確認に追われることもありました。
なので始発添乗の監督者がハンドルを握らせてくれなんて言ってくることは皆無だったし、割と真剣に前方注視を行っていたと思います。
やっぱり一人で見るより二人で見たほうが、異常の発見については効果がありますからね。
※昔は酒が残ったままの監督者が足元フラフラの状態の人も多く、とてもではないけど運転できる状態ではないから添乗していた面もあったけど
最終添乗はともかく、始発添乗は今の時代だからこそ継続するほうが良いと思うのですが、配属されていた乗務区ではもうずいぶん前に廃止されて、復活させる機運はまったくありません。
2023年2月8日に名鉄竹鼻線で始発の普通電車がレール上に置かれていたコンクリートブロックに衝突したとか、2025年3月2日にはえちぜん鉄道の始発列車が直径1.5mの落石と衝突したなど、始発添乗はやっぱり必要なのではないかなと思ったのです。
もちろん始発添乗があればコンクリートブロックや落石との衝突は回避できたとは言えませんが、
(コンクリートブロック発見してからの非常制動では間に合わないし、えちぜん鉄道の落石はカーブを曲がった所で見通しが悪くまず間に合わない)
ほんの少しでも早く発見できていたかもとか、衝突後の処置が少しでもスムーズにいったかもなんて考えてしまいます。
とにかく始発電車って最終電車が通過してから数時間は経過してから運行しているので、その間に何が起こっているのかなんて現場へ行くまで分かりません。
だから始発電車には監督者などが添乗して、何かあれば添乗者が対処することで始発電車の遅延を極力抑えられるし、報告や処置も運転士一人に任せるよりは良いと思うのですけどね。
極力人数を少なくして運営するのが当たり前のようになっているけど、省かないほうが良い仕事もあると思います。
始発を担当している運転士が軌道内に自転車が放り込まれているのを発見し、非常ブレーキで停止させて安全な場所に撤去。
添乗者がいれば撤去などはすべて任せ、運転士は運転指令に報告だけしてすぐに運転再開できます。
添乗者がいなければすべてを運転士が行うので、必然的に始発列車から遅延します。
とにかく始発列車くらいは監督者などを添乗させて複数人で線路の状態をチェックする、これって必要だと思いますけど。
※今でも多くの社局では始発と最終添乗を行っているそうで、私が在籍していた会社は……。