コロナ禍によって利用者数が落ち込み、それに合わせて運転本数を削減してきた鉄道各社。
ただコロナのダメージが薄らいでくると利用者数が徐々に回復する社局もあり、山手線などでは2025年のダイヤ改正では少しだけ運転本数を増加させる、そんなケースもあります。
ただ全国的に見るとこれは稀有なケースで、さらに編成両数の短縮化や運転本数を減らす会社が多くなっています。
コロナ禍による旅客数の減少での運転本数削減のときは、さすがにあれほどの旅客数の減少を予測することはできず、とりあえず様子見で減らしたものの大した経費の削減にはつながっていなかったと思います。電気代が少し安くなったとか、運転回数減少で設備の劣化がほんの少し遅くなった程度。
通常は数年前から計画的にダイヤを練り、それに合わせて保有車両数や乗務員の増減を計算し策定しますが、コロナ禍の時はそういう状態ではありませんでした。
コロナ禍によって大幅に利用者が減少し、そこから回復基調にある今は計画的なダイヤの見直しと、車両や乗務員の数の適正化が行われるわけです。そういった意味では今回のダイヤ改正は各社の今後の動向も踏まえたものになっているでしょう。
コロナ禍で最も運転本数が少なくなったダイヤをベースにして、そこに肉付けしていくのか、さらに肉を削ぎ落していくのか…。
コロナ禍における運転本数の減少は言ってみれば短期的な視野だけで行われたもの。
早朝や深夜時間帯に運転しても利用者がほぼいないのならば、繰り下げや繰り上げして本数を減らす。
電気代などの経費カットのほか、会社によっては乗務した距離や時間によって支給する乗務手当をカットできる程度かな。ただ会社としてはそれほどのメリットはなかったけど、先々のダイヤ編成でベースになったのは間違いないでしょうね。
今年くらいから減便ダイヤをベースにしたダイヤの見直しが本格化していきますが、ここ数年の間に乗務員や保有車両数の適正化の計画が各社で練られてきたことでしょう。
私が在職中は運転本数の増加が多かったのですが、乗務効率の向上という美辞麗句を並べ、たとえば運転本数は10%増加に対して乗務員の増員は数%に抑えられ、結果的に各行路の乗務時間や乗務距離が延ばされていく。運転本数の増加より乗務員の増加を抑えようとしますからね。
そして今は多くの社局で運転本数の減少によって一時的に乗務員が余っているかもしれません。関連会社への出向を含めて乗務職場以外へ異動させるとともに、新規での乗務員の採用数を減らす(今は積極的に採用する分、ベテラン勢をそれ以上に異動や早期退職で…)ことで、気が付けば乗務員の数が相当数減っているということに。結果的に運転本数の減少以上に乗務員の数を減らすのが常套手段ですから。
一部は乗務員を助役など監督職に上げ、助役などを他社へ異動させることもあります。
※これ私のパターン
私がまだ車掌の時代なんて、遊園地へ異動させられた助役もいました。出勤管理で偉そうにしていた助役が、遊園地でピンク色の派手な衣装にバカでかい蝶ネクタイを着けて子供に愛想を振りまいている様子を見たときは、いろいろと考えるものがありましたよ。
それと多くの乗務職場では行路(シフト)の数を100とした場合、乗務員の数をシフトに合わせて100にすることはありません。良くて98くらいですし、私が経験した最もひどい状態だと90を軽く割り込んでいました。この状態になると非番や公休出勤は当然のものになるなど職場は疲弊していきますが、今の地方の私鉄なんてそれ以上の惨状に陥っていますよね。
車両に目を移すと、編成両数の見直しで車両が余ってくれば古い車両の置き換えに使います。廃車数より新車導入数をが少なければ総数はマイナス。すると点検や整備にかかわる人員が減らされ(車両の減少数以上に)さらには税金や保険など莫大な経費が浮いていきます。また新しい車両はそれまで以上にメンテナンスに割く時間や労力、さらに経費が抑えられるとして人員を減らしにかかります。
実際のところ車両を持っていると、その車両を使う使わないにかかわらず経費がかかってきます。余裕のある会社は予備車両を複数用意して突発的な故障等にも備えるわけですが、ちょっと苦しくなると予備車両を極力持たないようにしていきます。
あまりにも保有車両を減らしすぎて、主制御器が不調だが予備車両がないからと言って朝ラッシュ限定で運用に入れ、何かあればすぐに対策できるようにと車両課の係員を添乗させて運行した列車を担当したこともあります。
本社の事務方のお偉い方たちは〝減らす〟ことに血眼になります。
たとえばですが、運転本数自体は変わらないけれども、折り返し時間を工夫するなどして運用数を減らすことに成功したダイヤを編成したスジ屋さんは、その後異例の出世を果たしたなんて事例も目の当たりにしましたし。
先にも書いたように運用数を減らして保有車両を1編成減らすことができれば、莫大な経費の削減につながりますから。
運転士や車掌は列車の運転本数がそれまでより増えようが減らされようが、ほぼ確実に会社は合理化も絡めてきますから、1日あたりの乗務量(距離や時間)が増加します。当然ですが疲れはそれまでよりも溜まりますし、元々仮眠はろくに取ることができない状態で乗務しますので、乗務員が居眠りしていたとか、停車駅を行き過ぎたなんて報道がまた増えるのかなとしか…。