5月も末になりもうすぐ本格的な雨のシーズンが到来します。
雨と言えば傘ということで、傘の忘れ物が大量に届くシーズンになります。
電車のシート横に傘を置いていたりすると、降りるときには傘の存在を忘れてしまうことって誰でもあると思います。
電車が駅に着いたときに雨がたくさん降っていれば傘を持ってきたことを思い出せるのですが、雨が上がっていたり、降りる時に天候が分からない地下駅などでは傘を持ってきたことを思い出すチャンスがないので、つい忘れてしまいますよね。
私が駅にいたのは1980年代(昭和50年代)なので、今とは忘れ物の取扱い方がまったく違うと思いますのでその点はあしからず。。。
忘れ物や落し物(以下 遺留品と記します)が駅へ届けられると、一品ずつエフという荷札のようなものに拾得した場所や時間とともに簡単にその品物の特徴などを記入し、忘れ物にくくり付けます。
ちなみにエフとはこういう感じのものです。
画像は伝票工房様からお借りしました。
駅に届けられた遺留品は所属する管区長所在駅(駅長室)に集められ、エフを見ながら台帳に記入していきます。
そして翌朝には忘れ物を忘れ物センターなどに集めて保管します。
この流れに沿ってすべての忘れ物を扱うのですが、困るのがビニール傘です。
ビニール傘って特徴がありませんよね。
エフに遺留品の特徴を書くのですが、透明で柄が白いビニール傘としか書きようがありません。
忘れたのが当日で、駅のホームのベンチの横に忘れたという申し出ならばまだ良いのです。
昨日の夜の8時ごろの電車にビニール傘を忘れたのですがなんて申し出だと、どの遺留品なのか特定なんてできるわけがありません。
たまにビニール傘の柄の部分に名前をマジックで書いている方がおられるので、そういうケースならばまだ特定できますし、エフや台帳にも名前を記載しますので届け出があればまず間違いなくお返しできるのですけど。
40数年前でもビニール傘は安くて500円はしましたが、今はコンビニだと1000円前後はするのかな。
この値段だともったいと思ってしまうのですが、100円ショップだとやや小ぶりで骨が細い物が売られていて、このタイプのものはほぼ使い捨て感覚で駅や列車内に〝捨てられて〟いることも多いですね。
乗務員になってからもビニール傘は遺留品として駅へ届けてはいましたが、忘れたといって小ぶりなビニール傘を駅へ探しに来る人は本当に少数でしょうね。
でも遺留品には違いがないので、駅でビニール傘を粗末に扱うことはないと思います。
ビニール傘って場所を取るしある程度の数になると重たいし、けっこう厄介なものでしたけど。
ビニール傘の〝元持ち主〟は捨てた感覚で列車のドア横のグラブハンドルに掛けて降りて行ったり、ホームのベンチに立てかけて去るわけですが、駅としては〝遺留品〟として扱うしかない。
私はエフに、
「柄プラ白、白ビニール傘 1」
みたいに番号を打っていて、駅長室勤務で遺留品の管理をしている日なんて、駅管区内の全駅からの同じ様なビニール傘のエフに番号を打っていくと30とか40なんていう数字になっていましたからね。
こうやって管理する遺留品として拾得したビニール傘ですが、処理が面倒なわりには返還する割合は少ないですし、駅員の中にはエフにも記載せずにそのまま駅で預かっておき、一日経っても取りに来ないビニール傘を自分のロッカーにしまう人も少なからずいました。
私は潔癖ではないのですが、他人が触った物を自分のモノにするのが嫌なので全部残らず忘れ物センターへ送付していましたが、
「送ったって取りにも来ないし、そもそもビニール傘は捨てられたモノがほとんどだから遺留品の処理をするのは無駄だって」
なんてよく言われましたが遺失物横領ですからね、絶対に持って帰っちゃダメですよ。
今はパソコンに入力して管理するのかな。
大量に届くビニール傘は今はどのように処理しているのかな……。